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(1)企業概要~NeuroTagsとは?
NeuroTagsは、AIを用いた暗号技術を用いた偽造品検知ソリューションを提供する、インド西部の都市プネーに拠点を置くスタートアップです。
独自のタグを貼付した商品が、購入~商品到着までの過程で、何者かにより偽造品にすり替えられると、即座にこれを検知・分析し、商品の販売者、買い手に通報します。
同社のサービスは、トレーサビリティ、顧客のロイヤルティ向上、マーケティング戦略強化、といったサプライチェーンの川上~川下まで幅広くカバーしています。
今回は、同社のCo-Founder & COOである、Abhishek Agarwal氏に話を伺いました。
彼は、Headstartのボランティアでもあり、Headstart Pune の City Leadとして、Puneのスタートアップエコシステム発展に奮闘しています。
関連記事:
https://yourstory.com/2018/08/pune-based-NeuroTags-waging-war-counterfeit-products-using-ai/
(2)スタートアップを創業したきっかけは?
私たち3人の共同創業者(Yogesh Miharia、Nitin Gupta、Abhishek Agarwal)は、2017年にNeuroTagsを設立しました。起業する前は、それぞれ、Yahoo、PayPal、 eBay、CognizantなどのグローバルIT企業で、ソフトウェアエンジニアや、サイバーセキュリティ専門家としてキャリアを積んでいました。
創業のきっかけは、ある日、私たちが見ていた偽造品市場に関するドキュメンタリーです。ドキュメンタリーの中で、偽造品が出回る事によって、市場で年間1.6兆ドルの損失があるという事実と、この問題の深刻さを知りました。
After massive research about the market and the solutions and technology in place, the trio came up with the idea of solving this issue with technologies like AI and ML.
私たちは、偽造品市場とその解決策や技術について徹底的に調査を行い、AIや機械学習といった、テクノロジーによる解決策を思いつきました。
(3)サービス、プロダクトの詳細について教えてもらえますか?
はい。以下にソリューションの仕組みを説明します。
市場に流通する多くの製品・商品は、ユニークなIDでマーキングされています。国や自治体で、市民が一人ひとり個人識別番号を持っているのと同様です。マーキングは、QRコード、バーコード番号などの形式で行うことができます。
私たちNeuroTagsは、”オープンタグ”と”プロテクトタグ”の2つで1組の対になっている、ユニークなカップルタグを開発しました。この2つはアルゴリズムで結合されています。
オープンタグ:オープンタグは、商品パッケージの外部に貼付されます。商品の販売が開始すると同時に、オープンタグはスキャンされ、商品が偽造品でないことを証明します。商品の買い手は、購入時に、その商品が本物であることを確認できます。
プロテクトタグ:プロテクトタグは、商品パッケージの内側に貼付されます。商品が購入されると同時に、買い手は商品パッケージの中にあるプロテクトタグへのアクセス権を持つことになります。
(このプロテクトタグは、顧客のロイヤルティ向上のためのエンゲージメント、商品保証のデジタル化など、様々な目的に利活用することができます。)
購入された商品は、配送元から出荷された時点から、IPアドレスやGPSによって追跡されます。買い手は、商品到着後、パッケージ内側に貼付されたプロテクトタグをスマートフォンでスキャンします、すると、その商品は、クラウド上にあるモニタリングシステム上で「開封済み」とマークされ、暗号コードが送信されます。このモニタリングシステムは、倉庫から買い手の元に届くまでの経路をトラッキングし、オープンタグとプロテクトタグがスキャンされた場所を、それぞれ特定します。出荷後~商品到着までの間に、不審な経路をたどっている、プロテクトタグが何者かによりスキャンされた形式があった場合には、その状況を通知・分析します。また、モニタリングシステム上のアルゴリズムにより、タグの複製が試みられた形跡を検知すると、複製されたタグを無効にします。
この仕組みで使われるコードの改ざんを防止するため、固有の番号の組み合わせも使用しています。
NeuroTagsのUSP(Unique Selling Point):
NeuroTagsのソリューションの強みは、エンドユーザー(商品の買い手)にとって非常に使いやすい仕組みであることです。エンドユーザーは、アプリなどをダウンロードする必要がありません。商品が届いたら、スマートフォンでタグを読み取り、報告する、という2ステップのみです。エンドユーザーにとって、NeuroTagsのサービスの利用障壁は非常に低く、カスタマーエンゲージメントの向上に繋がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=BIY2jZGVk9U
さらに、NeuroTagsのソリューションは、偽造品の防止のみならず、商品購入後のカスタマーエンゲージメントの向上、マーケティングプラットフォームの強化もサポートしています。
例えば、商品の保証、エンドユーザーのロイヤルティ向上、リファラルポイントの管理など、幅広い目的に活用できます。AIとMachine Learningの活用により、リテールにおける顧客チャネルを、大規模に獲得、管理、エンゲージメントする、統合プラットフォームの構築を実現します。
商品、梱包、パレット単位での管理システムをAIで監視することで、サプライチェーン全体の可視性を向上させます。不良在庫(売れ残り)の減少、倉庫から到着までのリアルタイム追跡、不正な流通を防止、サプライチェーンの透明性向上といった様々な効果があります。
(4)貴社のソリューションを通じて、どんな社会課題を解決しているのでしょうか?
私たちは、マーケットに流通する偽造品が引き起こす様々な課題を解決し、ブランドと買い手(最終消費者)の間の信頼構築の一助になりたい、という思いがあります。
これまで、業界では商品を販売する企業(ブランド)は、自社の商品のサプライチェーンの追跡、買い手の元に届いてからのデータ収集に苦戦し、市場に流通する偽造品に苦しんできました。
一部のデータでは、偽造品の流通によって、年間約1.6兆ドルの損失が生じているとも言われています。
(上記のデータを参照)
偽造品の問題は、B2Cで商品が売買される様々なインダストリーーヘルスケア、電気・電子機器、日用消費財(FMCG)、家電製品、衣料品ーといった業界全体に及んでいます。オンラインで購入した商品が、何らかの不正によって偽造品にすり替えられてしまったら、買い手の満足度、そしてブランドへの信頼は一気に落ちてしまいます。また、この問題は、医薬品、医療機器、文書認証など、耐久消費財の領域でも観られています。
偽造品対策として、RFIDやホログラムは既に一般的に利用されています。しかし、残念ながらRFIDやホログラムには容易に複製可能な側面があり、偽造品の流通防止には、それほど効果を発揮してきませんでした。
(5)貴社のビジネスや業界について、今日の状況について教えてください。(COVID-19による影響など)
パンデミックは、私たちの事業に大きな影響を与えました。
あらゆるモノの生産・流通に規制がかかり、サプライチェーンは大混乱しました。
パンデミックによって、私たちは次の3つのことに気付きました。
- 偽造品の問題を解決には、デジタル技術の活用が不可欠
- 商品の売り手(ブランド)と買い手(最終消費者)には、よりシームレスなつながりが必要
- ブランドにとって、効率性の向上と規模拡大には、サプライチェーン全体の可視化が不可欠
このパンデミック以降、多くのブランドから、デジタルトランスフォーメーションへのニーズが急激に高まっています。
(6)他の競合他社との差別化ポイントは何ですか?
NeuroTagsのソリューションを利用するメリットは多数あります。例えば、
- シンプルかつ包括的なソリューション
- AIによる高度なビッグデータ分析
- 変化・進化する技術への適応力
- 既存のエンタープライズシステムとのスムーズな連携
下図に、サプライチェーンの各プロセスにおける、NeuroTagsのメリットを紹介しています。
(7)短期・長期での事業計画を教えてください。
現在、インドとアメリカの2か国で事業を展開しています。中東諸国への進出も検討しており、具体的な協議を進めているところです。
短期計画としては、既存の事業地域(インド、アメリカ)でのマーケットシェア拡大に注力しています。
長期的には、アジアやヨーロッパなど、他の国・地域での事業拡大を目指しています。
(8)日本市場や日本企業との連携に関心はありますか?
はい、日本市場や日本企業とのコラボレーションの機会があれば、ぜひ検討したいと考えています。私たちが事業展開している国々(インド、アメリカなど)に進出している日本企業の皆さんに対し、製品管理やサプライチェーンのデジタル化をサポートします。
消費者向けブランドを持つ、日本企業とのネットワーキング、協業の機会があれば前向きに検討します。
NeuroTagsとの協業に関心を持った方がいたら、以下の連絡先までお願いします。
Abhishek Agarwal (LinkedIn)
本記事は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
Contributed by Kaede Nagashima, Volunteer, Headstart Bangalore